金曜の夜は別の人になりたい

人生は割とへっちゃら

社員食堂にて

増員のために入ってきて間もなく辞めていった人のことを考えている。

先日その人の後任が入って来たので皆んなで社員食堂に行くことになった。社員食堂は最初のころに数回行ったことがあったけど、日替定食で焦げたような味がする謎の味噌汁を出された日を最後に行かなくなった。正直行きたくなかったけど、味噌汁が付いてないものを頼めばいいやと思いつつ我慢して行った。日替の丼ぶりには味噌汁が付いてないみたいだったのでそれにした。メニュー的には豚丼と書かれてあったけど、豚肉より玉ねぎの量のほうが多かったので変なのって思った。

後任の人を含めて5人で社員食堂に行った。大所帯だったけど8人がけのテーブルがあったのでそこに座った。話題のほとんどは後任の人の話で、自分は適当に相づちを打ちながら聞いていた。仕事上の関わりは少なそうな感じがしたけど、頑張って欲しいなと思った。

一通り後任の人の話が終わったあと、前任の人の話になった。嫌な流れになったな、と感じたあと、悪口大会のような気持ちの悪い時間が始まった。あの人のあれが嫌だったとか、あの人は最初からおかしなところがあったとか、助けられたこともあったはずなのに、どうして悪いところばかり覚えているんだろうか。そんなんだから人が離れていくんでしょうに、と思った。そして自分もその輪に入ってしまっていることが単純に嫌だった。ふと頬杖をつきながら窓の外を見ると、少し遠くに海が見えた。空と太陽と高速道路も見えた。

窓の外に夢中だったからどういう脈略だったか覚えてないけど、確か後任の人が「早期退職って、なんか勿体ないですよね」と言った。すると別の人が「まあそうだけど、キャリア意識が高い人は決断が早い気がする」と言った。自分に対して言われた訳ではないというのに、その言葉を聞いたときに冷汗が出てきた。何に対しても決断が遅い自分の本質が逆説的にバレてしまったような気がした。

その日の午後はずっと上の空だった。転職して1年が経ったこと。確かに早期退職はもったいないことなのかもしれないと思えること。決断が遅い自分自身のこと。こうしている今もきっと前に進んでいるであろう前任の人のこと。

最近読んでいる「すべて忘れてしまうから」という本に「いつもの交差点で待ってます」というタイトルの話があった。新規事業を立ち上げようとしている筆者がお金にだらしない後輩の一言に背中を押される話だ。自分も何気ない一言に勇気を貰いたい。崩れかけているジェンガをわざと自分の番で崩すような、甲斐性がなくて身勝手な優しい勇気が欲しい。