金曜の夜は別の人になりたい

人生は割とへっちゃら

誰からも求められてないんだよ

家にテレビがないから世間でどんな芸能人が人気なのかを私は知らない。芸能関係のネットニュースもあまり読まない。洋楽が好きだから海外の音楽情報があればチラ見はするけど、日本の芸能人がどうとかこうとか、そういう情報は知ったところで何も分からないから積極的には読まない。雑談のときに少し困ることがあるけど「家にテレビが無い」という強力な免罪符によって、現状はなんとかその場を凌ぐことができている。

そんな私が「あのちゃん」の存在を知ったのは2023年の年末のことだった。実家でテレビを見ているときにチェンソーマンで聴いたことがある歌を色んな番組で歌っている姿を見かけ、この人が歌っていたのかと思った。アイドルのようにも見えたし、アーティストのようにも見えた。紅白歌合戦にも出てたから、今すごく人気がある人なんだなと理解した。

帰省から戻り、あのちゃんは他にどんな曲を歌っているのだろうと思ってYouTubeで検索してみると「あのちゃんねる」なるものが出てきた。あのちゃんがゲストと一緒に何かをするバラエティ番組のようだった。あのちゃんの行動や発言が面白くて、つい色々と見てしまった。もう既に人気だけど、これは人気になるなと思った。

あのちゃんねるで印象的だったのは、あのちゃんとメイプル超合金の安藤なつさんがハーレーに乗ってツーリングするという回だった。その回であのちゃんはお父さんの話をしていて、お父さんが東京に来たときはオムライスを作ってあげたりすると話していた。でも今は暫く会っていないそうで、紅白歌合戦に出場することが決まったときも、お父さんからの連絡は無かったらしい。

そのときのあのちゃんは「誰からも求められてないんだよ、誰も喜ばないですよ」と言って笑っていた。流石に言い過ぎてるような気もしたけど、卑下したくなるあのちゃんの気持ちが何となく分かるような気がした。結局は反応して欲しい人からの反応がないと実感が湧かなかったりするし、その素晴らしい功績を自覚することができなかったりもする。

親しい人からの祝福は嬉しいし、家族からの祝福はもっと嬉しい。あのちゃんのお父さんは私のようにテレビをあまり見ない人なのかもしれない。そういったケースもあるはずだから、誰からも求められていないとかは考えなくても良いと思うのだ。

てか、紅白にも出ているあのちゃんが誰からも必要とされていないと言うなら、私はどうなってしまうのだろうか。誰からも必要とされてなさすぎてビビってしまう。「誰かも求められてないんだよ」とあのちゃんは言っていた。しかしその言葉は私の台詞であり、残念ながら今の私自身だと思った。