金曜の夜は別の人になりたい

人生は割とへっちゃら

20240504

実家で母と暮らしている猫の爪が伸びていたので、動物病院に連れて行って爪を切ってもらった。ついでにコメカミのあたりに引っかき傷があったので「これなんですかね、爪が長いから傷ついちゃったんですかねえ」と先生に相談してみたところ、耳の中を診察してくれてた。耳垢が溜まっているみたいなのでちょっと掃除します、とのことだった。若い猫であれば、鎮静剤(だったかな?)を打って大人しくさせてから耳を洗浄するらしいのだけど、実家の猫さんはもうご老体らしく、その施術はできないとのことだった。そのため、先生とその助手がガッチリと猫を押さえつけ、洗浄液を耳に流し込んで力尽くで洗ってくれていた。洗浄液を流し込むたびに、猫の耳からポロポロと耳垢らしき塊が流れ出てくるのを見て、なんか凄い液体だなあ、と小学生みたいな感想を抱いた。いやあ、医学って凄いなあ。

猫の耳掃除を手伝ってくれた助手のかたはすごく優しい人だったみたいで、「すみません、すみません」と私に謝りながら猫を押さえつけていた。私は「あーもう、気にしないでどんどんやっちゃってください」と返事をしたけど、たまにしか会わない猫だからこんなことが言えるんだろうなって今これを書きながら思っている。もしも今日病院に連れてきたのが母だったら、嫌がる猫を見て少し心を痛めてたかもしれない。それくらい猫も先生たちも大変そうだった。

治療が終わって会計も済んだあと、耳の中とコメカミの傷に塗る薬をもらった。このあと1週間くらいは様子見が必要とのことだった。家に戻っても猫は興奮状態で、少し怯えたような雰囲気があった。少しでも落ち着けば良いなと思い、猫の身体を撫でてあげようと近づいてみたら全速力で逃げられてしまった。仕方がないので「君は今日すごく頑張っていたね」と猫に狙いを定めて念力を送っておいた。

午後からは暇だったので子供のころに住んでいた家の近くまで行ってみることにした。実家から少し離れているためバス(往復で900円も掛かった)で移動したのだけど、昔よく通った道路はキレイに改修されていて、同じような見た目だけど何かが決定的に違うような感じがした。それでもいくつかの思い出たちは蘇ってきてくれて、懐かしさと懐かしくなさが入り混じった変な気分になった。

ふとバスの中で、私ひとり居なくなったくらいでは、この街に与える影響なんて何ひとつも無かったんだな、みたいなことを考えていた。でもそれはとても前向きな気持ちであり、もちろんほんの少しだけ絶望感のような雰囲気もあった。バスの行き先は分かっているけど、行きたい場所も決まっているけど、本当に行きたい場所には辿り着けないような気がした。このバスは一体どこに向かっているのだろう、そんな気持ちで胸がいっぱいになった。