金曜の夜は別の人になりたい

人生は割とへっちゃら

目に映るもの

漫才が好きだ。単純に面白いから子供のころからずっと好きだ。いつか劇場とか寄席とか行って生で見てみたいと思っている。それくらい漫才が好きだ。

最近の漫才はよく出来ていて、3〜5分間くらいの時間をどう使うのかを緻密に計算されているみたいだ。漫才は間が大事だと思うし、噛んだらいけないとかもあるだろうから、芸人さんたちはちゃんと裏で練習とかリハーサルとかをやってるんだろうなと思う。芸人の皆さんはヘラヘラしてるように見えるけど、実はすごく真面目で、仕事に対してストイックな人たちなんじゃないかなと想像している。

僕は昔バンドをやっていて、ライブハウスで歌を歌っていた時期がある。遊び半分で送ったデモテープが某レコード会社の耳に留まり、教育枠?みたいな感じでマネージャーが付いていた時期もあった。だけど当時の僕は尖っていて、マネージャーさんからの連絡を無視してみたり、この先どうなりたいか聞かれたときに曖昧な返事をしてみたり、とにかく舐め腐っていたのだった。最終的には「こっちも仕事でやってる、いい加減にして欲しい」と言われ、3か月くらいで切られた。それ以降バンドも自然消滅した。あの頃はまだ10代だったからね、みたいなことは言い訳にならないんだけど、迷惑なクソガキだったことは物凄く反省している。

当時を振り返ってみると、舐め腐っていたのはそうなんだけど、ステージに立つことが単純に怖かったんだと思う。演奏も歌も下手だったし、バンドメンバーとの時間も合わなくて、ライブ当日に初めてみんなで合わる曲とかもあったりしたから。そもそも人に見られること自体がすごく怖くて、マジで見ないでって思いながらステージに立ってた。ま、お客さんは数人しかいなかったんだけどね。それでも結構ガチめに苦痛だったからシンプルに向いてなかったんだと思う。やり続けていたら変わっていたのかも知れないけど、当時はそういう中長期的な視点が持てなかった。

良い曲をたくさん作って、練習もたくさんして、ちゃんと準備しないとステージには立てない。だからライブハウスのステージに立っている人は皆んなすごいと思う。同じように、劇場や寄席のステージに立っている芸人さんたちもすごいと思う。普通に尊敬している。漫才やネタなどの面白いものをたくさん作れることもそうだし、ステージに立ち続けることができるのもそう。売れている芸人さんについては、安定してお客さんを引っ張ってこれるか、という人気商売要素がひとつ加わってくるはずだから本当にすごいと思う。

目に映るものだけが全てじゃない。今日もどこかで知らない誰かが苦労している。その中には誰からも認知されない苦労があったりするのかもしれない。だけど、その苦労はいつかきっと誰かが気づいてくれると信じている。僕も気づける人になりたい。最近はそのようなことをずっと考えている。