金曜の夜は別の人になりたい

人生は割とへっちゃら

傷は治るが跡に残る

傷からはたくさんの血が出てくる。その血はやがて瘡蓋となり傷口を塞ぐ。塞がりかけの傷口はたまに痛んだり痒くなったりする。そこに絆創膏や包帯を巻いて庇いながら、段々と傷は治っていく。

治ったら終わりじゃないこともある。そこに傷跡は残っている。視覚的に見える場合は思い出してしまう色々があるかもしれない。物理的な痛みの記憶も同じだろう。治るという言葉の曖昧さと、その意味について考えている。

傷は治るが跡に残る。それはただの傷跡なのか、それとも別の名前で呼ぶべきなのか、正直よく分からない。ただそこに残っていることだけが事実である。

傷付くこと自体は特に問題ない。そのあとのことがピンと来ない。傷付くことに意味を求めるのがそもそもの間違いなのかもしれない。でも痛みを伴うのであれば何らかの意味があって欲しいと思う。そのあと強くなれた、みたいな概念としてではなく、どこがどう変わったのかを具体的に知りたい。答えは自分の中にあるはずなのに見つからないことのほうが多い。

人間の細胞は毎日入れ替わっていて、3〜4か月で全部入れ替わるという話を聞いたことがある。見た目は変わらないけど原子レベルでは変わっているらしい。最初に聞いたときは訳が分からなったし、実は今でもよく分かっていない。文系の出身だから理解が及んでいないということにしておく。

しかしまあ細胞が入れ替わっているというのに、傷跡は残されたままであることが不思議に思えてならない。傷跡も自分の身体の一部として、遺伝子の中の設計書みたいなところに追記されてしまったということなのだろうか。頭の中の記憶や心の中のモヤモヤについても、傷跡と同じように、設計書に書かれてしまっているのだろうか。細胞は入れ替わっているというのに、いつまでもそこにあるのは何故なのだろうか。

傷は綺麗に治してあげないとダメだなと感じる。目に見えない傷なんかは特に。もう既にボロ雑巾みたいになっているかもしれない。心も体も替えが無いから大切にしたいとは思っている。だけど思っている以上に難しすぎて困っている。