金曜の夜は別の人になりたい

人生は割とへっちゃら

身を助けるもの

私の好きな言葉のひとつに「芸は身を助ける」という言葉がある。「芸」という言葉をどう解釈するのかは人それぞれ意見が分かれると思う。スポーツ、楽器、ユーモアなど、表現力に関する才能を指しているような印象があるけど、個人的は「好きなこと」を意味していると考えている。好きなことは身を助けるのだと。

例えば、食べることが好きな人であれば、美味しいものを食べることによって毎日が明るくなっているはずだ。美味しい食べ物をもっと食べたいと思えば、全国を歩き回ることもできるだろうし、その経験は結果的にその人の人生に活きてくると思う。

あるいは、体を鍛えるのが好きな人がいれば、その鍛錬によって人生が豊かになっているはずだ。体だけでなく心も強くなるだろうし、人としての成長にも繋がっているはずだ。

確かに「芸」という言葉には含みがあり、あたかも「専門性が伴う特殊な能力」みたいな圧を感じる。だからこそ思わぬところで役に立つ、みたいなことが教訓として謳われているのだろうけど、殆どの人はそんな専門性なんか持ってないと思う。少なくとも私は何も持ってない。でも好きなことはある。そこに思い入れがなかったとしても、大した時間を掛けていなかったとしても、好きなことなのであれば「芸」と呼ぶに相応しい代物であると考えている。

誰かの好きなことを深掘りしたら、きっと何らかの原体験が出てくるはずだ。その原体験が回り回って自身を助けに戻ってくると信じている。やり続けてきたこともそうかもしれない。好きだからやり続けることができたはずだから。もし仮に、嫌いなことをやり続けているのであれば、それは1つの専門性だと思う。さらに深く掘り下げれば、やがて才能へと変わる種が出てくるかもしれない。

現実的には「できること」と「やりたいこと」が違う場合があったりもする。その2つが合致する人は幸せな人だと思う。残念ながらその2つが合致してない私は不幸せなのかと言うとそうでもない。それらとは別に「好きなこと」があるから。人生は割とへっちゃら、そのように思う。