金曜の夜は別の人になりたい

人生は割とへっちゃら

お父さんの夢

お父さんとベッドの上で寝転びながら話をする夢を見た。現実のお父さんはもう既に亡くなっているから、本来であれば懐かしい気持ちになるはずだとは思うのだが、そういう気持ちはほとんどなく普通だった。そういえば見た目が少し違っていたような気がするし、性格も少し違っていたような気もする。でも間違いなくお父さんではあった。

そこには知らない人も一緒に寝転んでいて、関係性はよく分からなかったけど知り合ってまだ間もない様子だった。お互いにお互いのことをよく知らないような雰囲気があり、よそよそしい空気が流れていた。

お父さんは根掘り葉掘り知らない人に質問をしていた。いくつかの質問で分かったのだが、知らない人は若くして成功を収めた凄い人みたいだった。どんな風に成功を収めたのかはよく思い出せないけど、昔は引きこもりだったらしい。私は「ベタだなあ」と思ったけど、悟られないように少し驚いたような表情を交えなら、うんうん、と頷きながら聞いていた。その人は顔が良かったので、そのことも成功に繋がった要因のひとつだったんじゃないかなと思った。

ある程度の時間が過ぎた頃、知らない人から私に質問があった。年齢が近そうなのでいくつか聞きたいことがあるそうだ。その回答を元に私の年齢を考察し、当ててみせるとのこと。私は了承した。

質問のほとんどは他愛もないものだった。得意なことは何か。休みの日は何をしているのか、など。私はどの質問に対しても本当のことを回答した。

あるとき私の性格について質問を受けた。それまではほぼ即答していたのだが、自分の性格てなんだろうと少し悩んでしまった。「自分ではよく分からない」と素直に答えれば良いだけなのに、そのときは謎の使命感に駆られていて、いよいよ真剣に考え込んでしまった。

私が沈黙したとき、お父さんが間を埋めようと喋りだした。さっきまでの回答に補足がある、または訂正する、などと言っていた。「休みの日は実際のところ、ずっと携帯でエッチな動画を見ていることが多い印象」とか「得意なことはあるが、それをあまり表に出さないタイプに見える」などと言わなくて良いことを喋り始めたのだった。間違いではなかったので否定はしなかったけど、知らない人も「そうなんですね」と言いながら真面目に聞いているものだから、何だかとても恥ずかしい気持ちになった。

私の性格についての質問は、結局お父さんが答えてくれて「俺と似て負けず嫌いだと思う」とのことだった。私としては自分のことを真面目な性格だと思っている。

生前のお父さんはそういう父親らしい発言をすることが少なかった。単純に苦手だったのだと思う。たとえそれが夢であったとしても、1番長く私のことを知っているであろうお父さんが、どんな人間として私を捉えていたのかを知れて嬉しかった。

結局、私の年齢を考察し切る前に知らない人は帰ることになった。同時にその空間(というか夢)も終わった。また次回、と知らない人は言っていたけど、もう会えないことは何となく分かった。