金曜の夜は別の人になりたい

人生は割とへっちゃら

あの日のスヌーピー

昔、とある大きな仕事が終わったタイミングで仕事仲間とお好み焼き屋さんで打ち上げをしたことがあった。あまり高いお店ではなくて、どちらかと言えばコスパ重視のお店だった。確か食べ飲み放題のコースで、お好み焼き以外にもフライドポテトとか唐揚げなどの揚げ物も注文できたから、もはや何屋さんだったのかはよく分からない。テーブルに備え付けられていた鉄板の上でお好み焼きを作ったことは間違いないから、お好み焼き屋さんだったということにしておく。

普段、私は全く料理をしない。でも学生のころはファミレスのキッチンでアルバイトをしていた。客が少ないモーニングの時間帯なら1人で回せていたから、割と手際は良かったんじゃないかなと思う(いま同じことをやれと言われても絶対にできない)。なのでお好み焼きを作るくらい私にとってはお手のものだった。具材を混ぜて焼くだけではあるが、それでも面倒臭いのが料理の欠点だと思う。自分のためではなく、仕事仲間のために作るお好み焼きだから手が動いたのだった。

先に油を引いて、油の温度が上がってから焼き始めた。そうしないと焼き目が付かないし、お好み焼きが鉄板にくっついて見た目が悪くなってしまうのだ。料理は見た目が肝心なのである。アルバイトで飲食業に潜っただけの私でもそれくらいは分かる。1番重要なのは味だとは思うけど、見た目もそこそこ重要だと思う。

お好み焼きを作り終えた私は、鰹節や青のりをかける前に、ソースで何か絵を描いてみたいという気持ちになっていた。直径15センチくらいのお好み焼きだったから、やろうと思えばちゃんとしたお絵描きができそうだった。ほとんど悪戯みたいなノリで、私はこっそりお好み焼きの上にスヌーピーの絵をソースで描くことにした。それが割と評判が良くて、皆んなが笑ってくれたことが嬉しかった。そのときに撮った写真は今でも大切に残している。何気ない1日の、何気ない出来事だった。

あの日のスヌーピーを、君はまだ覚えているだろうか。お好み焼きの味は思い出せないけれど、あの日お好み焼きの上に描いたスヌーピーの絵を、私は今でも覚えている。皆んなで楽しく過ごした時間を覚えている。

現在は皆んなそれぞれ別の場所で働いているけど、また一緒に仕事をしたりできたら良いなと思う。そのときはまたスヌーピーを描きたい。お好み焼きとソースじゃなくても、紙とペンがあれば良い。もっと上手にスヌーピーの絵を描けるようになりたい。